はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

江戸川乱歩の「黒蜥蜴」再読

 

 

江戸川乱歩の「黒蜥蜴(クロトカゲ)」という作品は、
江戸川乱歩が書いた娯楽的な小説の代表作です。
イメージ的にいうと、「ルパン三世」でしょうか?
小説の内容は、江戸川乱歩が創作した探偵「明智小五郎」が、
謎の女と対決をします。

この謎の女には、色々な要素があります。
元祖ボクっ娘(発表は1936年)であり、犯罪集団のボス。
変装術にたけており、不測の事態でもすぐに対象できる、天才的犯罪者。
妖艶な美女でありながら、子供の様な「残虐性」と「感受性」をもつ女。
ここまで、色々な要素がありながら、彼女の過去も名前も不明なのです。


初めて読んだ時は、気付かなかったのですが、
彼女自身は名前を名乗ってないのです。
警察関係者は彼女の事を「黒トカゲ」と呼んでいますが、
それは彼女の左腕に「黒トカゲ」の刺青があるから、そう呼んでます。
明智小五郎と初めて会話する時は、緑川夫人という偽名ですし、
手下は彼女の事を、マダムかボスと呼んでいます。
何故、江戸川乱歩は彼女に、名前と過去を付けなかったのか?

それは、この作品は【明智小五郎VS明智小五郎】だからです!

順をおって妄想します。
「黒蜥蜴」は乱歩が自身の作品にどうやって、娯楽要素を取り入れるか?
その試行錯誤の中で作られた作品であるからです。
「黒蜥蜴」発表前にも、
娯楽要素を入れ込んだ連載小説を、何本か発表してますが、
小説に出てくる、事件現場の方が印象が強く、犯人の印象が薄く感じます。

なので乱歩は、今までの彼とは違う構想で考え始めます。
それは、推理ゲームで対戦するイメージで作品を構想しました。
ゲームで対戦するという事は、対戦者が必要になります。
乱歩自身が創作した「名探偵:明智小五郎」という存在に対して、
同等の存在が必要になりました。それが謎の女でした。
捕捉
推理で対戦するイメージで作品を構想したと、乱歩自身があるインタビューで答えてます。

「黒蜥蜴」を発表後、
今までの乱歩作品とは違う「怪人20面相シリーズ」を書き始めます。
このシリーズでは、明智小五郎の相手は怪人20面相なんですけど、
明智小五郎と比べると怪人20面相の方が明らかに格下なんですよ!
やはり、物語は敵が魅力的じゃないと、駄目なんですね。