はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

クリスティーの「ABC殺人事件」再読

アガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」。
小学生の時、病院の待合室で、この小説を読みました。
これが、自分が初めて推理小説を読んだ時でした。
それから数年後、また改めて読みたくなり購入しました。

それから20年後、再読してみて、ある考えが浮かびました。

それは、ABC殺人事件」は、自分が以前にブログに書いた、
アクロイド殺人事件」を再構築した作品ではないか?
と、考え始めました。

haguture.hatenadiary.jp

何故、そう考える様になったのか?
それは、彼女が執筆したある作品が関係してきます。
その作品とは「三幕の殺人」という作品で、
彼女の作品の中では、あまり知名度がない中編小説です。

この1934年に発表された【三幕の殺人】は、
話の構成が【アクロイド殺人事件】と重なる部分が見られます。
そして、この1934年に【オリエント急行殺人事件】も発表されています。
【三幕の殺人】と【オリエント急行殺人事件】という2つの作品。
執筆時期が重なっている、この2つの作品を比較して読むと、
俳優、芝居、演技など、芝居に関する単語が共通して記述されています。
そこを踏まえて妄想すると、アガサ・クリスティーは、
アクロイド殺人事件】をベースにして、そこに芝居的な要素を加えて、
この【三幕の殺人】を執筆したと考えました。

さて「三幕の殺人」という作品ですが、自分自身の感想は、
可もなく不可もない作品という印象でした。
では、クリスティー自身はこの作品を、どう思ったんでしょうか?
彼女の思いはわかりませんが、
彼女は、2年後の1936年に「ABC殺人事件」を発表しています。

「三幕の殺人」と「ABC殺人事件」という2つの作品を比較してみると、
小説内の殺人事件の構成は、共通している箇所があります。
なので、「三幕の殺人」を書くことで見えた反省点を元に、
彼女は「ABC殺人事件」を書き上げたと思います。

1926年に「アクロイド殺人事件」が発表された当時、
今までになかった結末の為に「この作品はアンフェアだ!」とか、
「アンチ・ミステリーな作品だ!」という批判もされました。
そして、その批判に対して彼女が試行錯誤した結果が、
10年後に書かれた「ABC殺人事件」だったのではないでしょうか?
自分はそう妄想してしまいます。