自分の本棚にある小説家:トマス・ハリスの作品は、
「レッド・ドラゴン」と「羊たちの沈黙」と「ハンニバル」の3冊です。
そして、その中で一番面白いのが、この「羊たちの沈黙」です。
自分は【羊たちの沈黙】を読んだ数年後に、
【レッド・ドラゴン】と【ハンニバル】を購入して読んでだのですが、
この2作は【羊たちの沈黙】と比較すると、何か物足りなさを感じます。
では、この2作と【羊たちの沈黙】は何が違うのか?
と、思いながら再読してみました。
この「羊たちの沈黙」は精神異常者や、快楽殺人者が登場して、
異常な事件が起きるため「サスペンス小説」と認識されている小説です。
でも自分は、この小説は王道的な漫画要素が強い小説だと思います。
何故、そう思うのか?それは、
数年前に読んだ「荒木飛呂彦の漫画術」の中で書かれている内容と、
「羊たちの沈黙」の主人公、「クラリス」が重なっているからです。
「荒木飛呂彦の漫画術」という本は、
漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の作者:荒木飛呂彦氏が、
自身の創作姿勢について書いている本です。その本の中に、
「王道漫画の主人公は常にプラス」という設定が大事だと書いています。
その設定とは、主人公が常に目的に向かってつき進み、
ピンチになっても、それを乗り越えていく事。
そして、主人公が成長する過程を分かり易く、読者に表現する事。
以上の設定が「王道漫画の主人公は常にプラス」という設定です。
では、この小説のあらすじを簡単に説明します。
FBIの訓練生である「クラリス」は、
FBI行動科学課課長「クローフォド」からある仕事を頼まれます。
その仕事とは、医療刑務所に収監されている、
著名な精神病医者でありながら、殺人鬼でもある「レクター博士」に、
FBIで立ち上げるプロジェクトに関する資料を渡す事。
「クラリス」と出会った時、「レクター博士」は彼女に興味を持ちます。
そして彼女に、こう言うのです。
「自分が殺害したラスペイルという人物を、調べてごらん」と。
そこから「クラリス」は世間を騒がせている、
連続殺人犯「バッファロービル」の捜査に巻き込まれていきます。
【バッファロービル】の捜査に参加する事になった、
【クラリス】は上司の【クローフォド】と行動を共にします。
そして【クローフォド】は自身の行動を【クラリス】に見せる事で、
【クラリス】が何を感じ取るか?という描写をしています。
なので、この2人の関係性は【上司と部下】というよりも、
【先生と教え子】という印象が強いです。
しかし、1人で捜査している時は、訓練生という事で立場が弱いです。
なので、バカにされたり、政治的な圧力をかけられたりします。
でも彼女はその状況を、乗り越えようと足搔き、事件の捜査を続けます。
「羊たちの沈黙」には存在する物。
それは、王道漫画的な主人公である「クラリス」の存在でした。
主人公の「クラリス」の目的と行動がハッキリしている為、
小説内で場面展開をしても、話の大筋からそれる事がありません。
だから読みやすく、その異常犯罪の世界観に浸れる、
ある意味、王道的な小説だと考えます。