はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

伊藤計劃の「The Indifference Engine」再読

病気の為に、34歳で亡くなられた伊藤計劃氏。今回は、

伊藤氏の短編集「The Indifference Engine」について書いてみます。

この短編集の巻末には、

伊藤氏の未完小説【屍者の帝国】が編集されています。

もし彼が亡くならなければ、どんな小説になったのでしょうか?

自分は、この短編集に編集されている【女王陛下の所有物】と、

【From the Nothing,With Love】という2つの作品をベースにして、

書かれたのではないか?と、妄想してしまいます。
この2つの作品は、映画007シリーズを題材にした創作物です。

映画007シリーズは1963年に公開されて、

2021年には新作も公開された、スパイアクション映画です。

そして、主人公のジェームズ・ボンドは、演じる俳優が変わりながらも、

映画007シリーズは作られてきました。

伊藤計劃氏は「演じる俳優が、変わりながらも続く存在」から、

「今まで登場した、ジェームズ・ボンドの中身が同じ人格だったら?」

という構想をして、以下の様な設定を作りました。

ジェームズ・ボンドのオリジナル】が、施設で永久保存されています。

そして【オリジナル】の人格・記憶・技術を他人へ移植する事により、

次のジェームズ・ボンドが誕生します。

そして、そのジェームズ・ボンドが死んでしまったら、

また他人へ移植して、次のジェームズ・ボンドが誕生する設定。

では、この設定を使用した2つの作品について簡単に説明します。


まず【女王陛下の所有物】という短編コミック。
この作品はジェームズ・ボンドの上司M(エム)の物語。

「何度も何度も、彼が違う顔で再び戻ってくる。こういう日々を、

あなたはどういう顔で迎えたのかしら・・・Q(キュウ)」

Qの墓前でMがこのセリフを言いながら、この話は終了します。
*Qとは、007シリーズの登場人物。主にボンドの武器開発を担当しています。

次に【From the Nothing,With Love】という短編小説。
この短編小説は、ジェームズ・ボンド視点の物語。
上司のMから彼は、ある連続殺人の捜査を依頼されます。
そして捜査を続ける事で判明していく、

「オリジナル」を他人へ移植する行為を続けた事によって、

起きたある現象が解明され始めます。
(正直、この短編小説は後半に進むほど、解りにくい構成になってます)
*「From the Nothing,With Love」は直訳すると「虚無より愛を込めて」。

ちなみに、伊藤氏の未完小説【屍者の帝国】の舞台はロンドン。

科学技術の発展により、死者が蘇る事ができる世界。

そして、主人公が謎の人物【M】と対面した所で、小説は終わっています。

出来る事なら伊藤氏自身の手で、

この小説に結着をつけてほしかったです・・・。