はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

江戸川乱歩は「何の天才なのか?」③


前回の記事で、
普通の人には何気ない事も、江戸川乱歩にとってはスリルであり、
そのスリルが乱歩自身の小説に反映されていき、

読者は江戸川乱歩の小説を読むことで、

乱歩のスリルに共感して、日常に隠れたスリルを認識すると書きました。

なので今回は、江戸川乱歩が日常生活で感じたスリルを、

どの様に小説で反映されたか?という事について書いてみます。

*ここからは、角川ホラー文庫の「火星の運河」を参考にして書いています。
この文庫本に編集された乱歩の寄稿文には、
江戸川乱歩が日常生活で感じたスリルについて書いた寄稿文が、

何本が編集されています。

その中のひとつに【人形】について書かれている寄稿文があるのですが、

この寄稿文で書かれている内容は、

江戸川乱歩の独自の世界観の原点だと自分は考えています。
なので、この【人形】について書かれた寄稿文の内容を簡単に説明します。

江戸川乱歩が幼少期に彼の祖母から聞いた昔話がありました。
そして、その昔話に出てきた人形の印象が30年以上経っても、

江戸川乱歩の記憶に残っていました。

それから江戸川乱歩は、

仕事関係で知り合った人形制作者達と交流を深めていきます。

でも、乱歩が興味をもったのは人形自体ではなく、

人形制作の工程や人形ごとに使用される素材のほうでした。


さて、乱歩の小説にはよく【女性のバラバラ死体】が出てきます。

しかも作品ごとに様々なバージョンで書かれています。
何故、江戸川乱歩は様々なバリエーションのバラバラ死体が書けたのか?

それは、人形制作者達との交流が乱歩に影響を与えたからです。

人形製作者にとっては人形の制作工程は日常です。

でも、塗料を乾燥させる為に、

工場に吊るされていた無数の人形の手足を見た江戸川乱歩にとっては、

その空間は様々なバリエーションの死体置き場だったのです!
それぐらいに、人形の制作工程のその場面が印象的だった為、

江戸川乱歩が小説で書くバラバラ死体には、
作品によって様々なバリエーションが誕生しました。


さて、この記事の最初に読者は江戸川乱歩の小説を読むことで、

乱歩のスリルに共感して、日常に隠れたスリルを認識すると書きました。

では、日常に隠されたスリルを認識した読者はどうなるのでしょう?
その答えとして、自分に起きた現象について書いておきます。
この現象は自分だけかもしれませんが、

自分は「革椅子」と「打ち上げ花火」を見るたびに、

江戸川乱歩の事を連想する様になりました。

そして、この現象は江戸川乱歩のスリルに共感した事で、

日常に隠れたスリルを認識する様になった為だと、自分は思います。