はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

伊藤計劃の「虐殺器官」再読

伊藤計劃(イトウケイカク)というSF小説家がいました。

彼は2009年に34歳の若さで亡くなりました。

なので彼の長編小説は、

虐殺器官(2007年)」と「ハーモニー(2008年)」の2作のみ。

後は、彼の短編集と二次創作小説が数冊のみです。

補足:伊藤計劃氏には「屍者の帝国」という長編小説がありますが、

この小説は彼が亡くなった後、別の作家が引き継いだ作品です。


自分が今まで読んだ「SF小説」で1番面白い作品は?と聞かれたら、

この「虐殺器官」と答えます!

そして「虐殺器官」について書くなら、

小島秀夫氏についても取り上げないといけません。

彼なくしては「虐殺器官」は存在しなかったのです。

小島秀夫:テレビゲーム「メタルギア(略称M・G)シリーズ」のプロデューサー。

伊藤計劃氏は自身の事を「小島原理主義」と自称する程に、

小島氏の作品から影響をうけました。

それは、彼の短編集「The Indifference Engine」に編集されてる、

「Heavenscape」という短編小説から読み取れます。

この短編小説は、

小島秀夫氏がプロデュースしたゲームから着想を得た小説であり、

虐殺器官」のプロトタイプ的な存在です。
*この短編小説の冒頭部分がそのまま「虐殺器官」にも使用されています。

そして、この両氏は交友関係があった為、

小島秀夫氏の「M・G・シリーズ」では、

伊藤計劃氏から、影響を受けている設定が色々と出てきます。

では「虐殺器官」のあらすじについて、簡単に説明します。
小説の主人公は、アメリカ特殊部隊の隊長:シェパード大尉。

彼の特殊部隊は、内戦状態になったA国に潜入します。

目的はそのA国を内戦状態にして、勢力拡大の為に、

兵士、そして非戦闘員も虐殺していく「武装勢力のリーダー」の暗殺。

そして、シェパード大尉が「武装勢力のリーダー」を捕捉して、

「何故、こんな事をした!」問いただした時、

そのリーダーは「内戦は私が引き起こしたのか?」と、

混乱し始め、そして茫然自失な状態になっていきました。

そして、話が進むにつれ、

世界中で起きている内戦に関与している、人物が浮かび上がってきます。

その人物が行く所々で内戦が始まり、そして人々は虐殺されるのです。

「たった1人の人間が、このおぞましい虐殺を引き起こしているのか?」

と考えながら、シェパード大尉は、その人物の追跡を始めます。

虐殺器官」を初めて読んだ時は、

自分は伊藤計劃氏と小島秀夫氏の関係を知りませんでした。
しかし、2人の関係性を知ってから、再読してみると、

この小説は、小説家とゲームプロデューサーという立場は違うが、
お互いに影響を与え続ける、伊藤氏と小島氏の関係性があったからこそ、

創り上げられた、稀有な小説だったと実感しました!
だからこそ、この「虐殺器官」は面白いのです!