はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

江戸川乱歩の「陰獣」について、更に妄想してみた➀

黒蜥蜴


江戸川乱歩の「陰獣」を再読した事で自分は、

【この小説は江戸川乱歩が数年後に発表した
【黒蜥蜴】のプロトタイプだったのではないか?】と考え始めました。

今回は、その事について書いてみます。

前回の記事にも書きましたが、この「陰獣」という小説は、
江戸川乱歩1920年代に書いた複数の小説から、色々と引用して、

それを、自身の手でパロディ化した小説だったと自分は考えています。


例えば、この小説に登場する【大江春泥】という探偵小説家。

小説の中では【大江春泥】が書いた探偵小説の題名が複数出てきますが、

その題名はすべて、江戸川乱歩1920年代に発表した小説の題名を、

パロディ化した名前がつけられています。

なので、1920年代の江戸川乱歩の小説を読んだ事がある人が、

この小説を読むと「あ、この部分はあの小説からの引用なのかな?」とか、
「お?この人物のこの性癖は、あの小説からかな?」という連想が、

色々と頭に浮かぶと思います。

さて、この小説に登場する主要人物に【小山田静子】という女性がいます。

今回、【陰獣】を再読した時に、彼女に関連した箇所を読んでいると、

自分は何故か【黒蜥蜴】を連想してしまいました。

そして【陰獣】から【黒蜥蜴】を連想した事に、自分は戸惑いました。

何故なら【黒蜥蜴】が発表されたのは、

この【陰獣】が発表された6年後の1934年だからです。
その事から自分は、

江戸川乱歩が1930年代から始まった「明智小五郎シリーズ」に、

「陰獣」で登場した【小山田静子】を探偵小説用に再構成した存在が、

「黒蜥蜴」だったのではないか?と考えました。

そして、この【小山田静子】という女性は、

「陰獣」を推理小説と捉えるなら「黒蜥蜴」との共通点がある女性です。

しかし、「陰獣」を怪奇小説として捉えるなら、
「黒蜥蜴」とは、まったく共通点がない女性になってしまいます。

どういう事かというと、

この「陰獣」という小説は、読者の結末の捉え方によっては、

【小山田静子】という女性の印象が全然変わってしまうからです。


「陰獣」という小説は、主人公である探偵小説家が推理をする事で、

事件は解決して結末を迎えます。しかし、主人公の

「もしかして、今までの推理は間違っていたのでは?」

という回想をした所で小説は終わります。


つまり、この小説の結末は読者の捉え方によっては、

推理小説」とも「怪奇小説」ともいえる小説なのです。

は何故、江戸川乱歩はこんな結末にしたのでしょう?

それは、この小説は江戸川乱歩にとっての【猫の怪談小説】だからです。

なので次回は、江戸川乱歩と【猫の怪談小説】について書いてみます。