はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

小泉八雲の「破約」紹介


「二股掛けられた女同士が言い争い、男が仲裁する場面て、

 ドラマとかでよくあるけど、何で女同士で言い争うんだ?

 悪いのは男なのに?」。

このセリフは、自分が昔、読んだ漫画で出てきたセリフです。

漫画の作品名は、思い出せなかったのですが、

小泉八雲の【破約】を読んだ後に何故か、そのセリフが思い浮かびました。

まずは「破約」の内容を簡単に説明します。

病気が原因で、今にも死にそうな妻に対して、男はある約束をしました。

その約束とは「私が死んだ後、後添えを迎えない」という約束でした。

そして、妻は自分が死んだ後、その遺体を2人で植えた庭の木の根元に、

埋葬してほしいと伝えて亡くなります。

男は妻の遺言通りに、自宅の庭の木の根元に妻を埋葬しました。
しかし、男は親族や友人からから再婚を勧められて、若い娘と再婚します。
そして、再婚して8日目の夜に異変が起きました。

その異変とは、新しく来た嫁の前に、亡くなった妻の幽霊が現れました。
そして、こう言いました。

【この家の中に、この家の中にいてはならぬ!

 ここでは、まだ私が主婦なのだ!

 出ていておくれ。だが、出ていく訳は、誰にも話してはならぬ。

 もし、あの人に話したら、そなたを八つ裂きにしてしまうぞ!】

そう伝えて、先妻の幽霊は姿を消しました。そして、悲劇が起ります。


小泉八雲は、この伝承を聞かせてくれた友人に、

【その先妻の復讐は、男に向かってやるべきだったと思います】と、

感想を述べると、その言葉に対して友人はこう答えました。
【男たちはそう考えるのですが、それは女の考え方ではありません】
という文章で話は終わります。
何故、先妻の幽霊の怒りは、約束を破った男にではなく、

新しく来た嫁に向かったのでしょうか?
それは、男性と女性では【現実】の捉え方が違う為に起きたと思います。

【男性と女性では「現実」の捉え方が違います。

男性にとって現実とは、

所属している会社や組織での人間関係を重視する傾向があります。

しかし、女性にとって現実とは「衣・食・住」の事。

つまり、自身が所有・管理している物を重視する傾向があります】。

この言葉は、評論家:長谷川三千子氏の言葉です。

そして、この考え方をこの話に当てはめると、以下の答えになりました。


先妻にとっては、男が約束を破った事よりも、

自身が作り上げた場所に、別の女が入ってきた事が一番許せない事でした!

その為に先妻は怒り狂い、幽霊となって現れたのではないでしょうか?
この小説を再読したら、こんな事を妄想したので書いてみました。