1948年に発表された横溝正史の「夜歩く」
この小説は「金田一耕助シリーズ」3本目の長編小説になります。
今回は「夜歩く」を再読して気付いた点を書いてみます。
➀「夜歩く」の怪奇小説的な要素について。
「夜歩く」は「金田一耕助シリーズ」の中でも、
特に怪奇小説的要素が多い小説だと思いました。
先ずは「夜歩く」で書かれた怪奇小説的要素を挙げていきます。
*年齢と背恰好も似ている2人のせむし男。
*夢遊病の美女と幽閉されている謎の女。
*血塗れの日本刀と首の無い死体。
*嵐の夜の惨劇。
この【夜歩く】で書かれている怪奇小説的要素には、
横溝正史が影響を受けた小説家達の怪奇小説的要素も盛り込まれています。
補足:ディクスン・カーの小説にも「夜歩く」という小説がありますが、
横溝正史の「夜歩く」とは共通点はありません。同じ題名になったのは偶然なんでしょうか?
➁「夜歩く」で使用されたトリックについて。
この小説で使用されているトリックは、
横溝正史が得意な【一人二役】と【顔の無い死体】の組み合わせと、
【アクロイド殺し】が使用されています。
なので、この小説を初めて読んだ時、序盤で犯人がわかってしまいました。
でも、再読した時に気付いたのですが、この小説は、
【アクロイド殺し】が使用されなくても推理小説として成立しています。
しかし、【アクロイド殺し】を使用する事で小説の内容が、
更に怪奇小説的になっています。
つまり、横溝正史は「アクロイド殺し」をトリックとしては使用せず、
この「夜歩く」では怪奇小説的要素のひとつとして使用しているのです。
補足:推理小説で使用されるトリックで「アクロイド殺し」というトリックはありません。
しかし、推理小説が好きな人には「アクロイド殺し」という言葉を出すだけで、
「ああ、そういう事ね」と納得する言葉でもあります。
なので、この記事では「アクロイド殺し」をこの様な形で使用しています。
「金田一耕助シリーズ」3本目の長編小説「夜歩く」。
この小説は「横溝正史版アクロイド殺し」なので、
「金田一耕助シリーズ」の中でも少し傾向が違う小説です。
そして今回、「夜歩く」を再読して思いました。
「横溝先生、すみませんでした!
自分はこの年になってやっと、この小説の面白さに気づきました!」