はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

「アクロイド殺し」は何故、アンフェアと批評されたのか?➁

*今回の記事は横溝正史のエッセイ「真説金田一耕助」を参考にして、
 以前に書いた物を再編集した記事になります。


クリスティーの「アクロイド殺害事件」がアンフェアだ!と批判された理由は1920年代当時、推理小説とは【探偵の視点】で話が展開する小説だと人々は捉えていた為に「アクロイド殺害事件」は批判されたのではないか?
と、前回の記事で書きました。
なので今回は、当時の推理小説について書きながら「アクロイド殺害事件」が批判された理由について妄想してみます。

怪奇小説家:ポーが書いた世界初の推理小説「モルグ街の殺人」から影響を受けて、英国の小説家:コナン・ドイルは1887年に探偵ホームズと助手ワトソンが活躍する『ホームズ・シリーズ』を発表しました。
そして、この『ホームズ・シリーズ』が異例な程の人気が出た事で、
【探偵が事件を解決する小説】は人々に受けいられる様になり、
『ホームズ・シリーズ』から影響を受けた推理小説家が何人も登場しました。
この様な経緯の為、1920年代の人々にとって推理小説とは、
事件を探偵が調査して解決する【探偵の視点】で話が展開する小説だと認識されました。

さて、「アクロイド殺害事件」は探偵:ポワロが殺害されたアクロイド氏の事件を解決する話ですが、コナン・ドイルの『ホームズ・シリーズ』を連想させる様な設定で書かれています。
では何故、クリスティーがその様な書き方をしたかというと、
それは【登場人物の視点が変わる事で話自体が変わる】手法を、
アクロイド殺害事件」で使用したからです。

【登場人物の視点が変わる事で話自体が変わる】という手法は、
今まで書いてきた話が裏返って別の話が本筋になる為、
読者には【この小説は探偵視点の話】と思い込んで貰う必要があります。
その為、クリスティーは読者がコナン・ドイルの『ホームズ・シリーズ』を連想する様に書きました。
なので当時「アクロイド殺害事件」を読んだ人は、

「この事件を、どうやってポワロは解決するんだ?」とか、

「事件関係者のアリバイの中で怪しいのは誰だ?」とか、

「事件関係者の中で動機と殺人を行う機会があるのは誰だ?」など、

「どの様に探偵が事件を解決するのか?」と、考えながら読んだはずです。
ですが、この小説は急に今までの話をひっくり返す様な展開をします。
そして、犯人が誰か判明した時、読者は以下の様に思ったはずです。

【え?なんでこの人物が?だって、この人物には殺害する動機や殺害する機会についても書かれてないじゃないか!!】

1920年代の推理小説は【犯人は誰か?】という謎解き要素が強く反映された小説が主流でした。
その為、当時の推理小説のファンは色々なトリックや意外性のある犯人が登場する小説を良い推理小説と評価していました。
だからこそ、今までの話をひっくり返す様な展開をして、
更に犯人が判明した後に犯人の動機や殺害する機会が書かれた為、
アクロイド殺害事件』はアンフェアだ!!と批判されたのだと思います。

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