はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

クリスティーの「そして誰もいなくなった」再読

 

アガサ・クリスティーは、推理小説以外の作品も執筆してます。
自分は読んだ事はないですが、恋愛小説やスパイ小説も書いています。
では、彼女が書いた【そして誰もいなくなった】という小説は、
どのジャンルに入る小説なのか?

まず作品全体は、推理小説的な設定で構成されています。
作品の舞台となる「孤島」は、
外部からの交通手段も連絡手段も遮断された状態です。
この設定は、推理小説で使用される【嵐の山荘】に当てはまります。
捕捉:「嵐の山荘」=外部との連絡もとれない、閉じられた空間で事件が起きる設定の総称。

作品内で起きる殺人事件は、童謡の歌詞を「見立てた殺人」です。
何かに【見立てた殺人】も、様々な推理小説で使用されています。
捕捉:「見立てた殺人」=犯人が何らかの意図で殺害現場に細工する事の総称。

あと小説の最後に、犯人の動機と犯行手段も記述されています。
以上の3点が、この作品における推理小説的な要素になります。

次に、推理小説怪奇小説の関係性を要約します。
推理小説怪奇小説から生まれたジャンルです。
推理小説の意味を調べると、
 「事件・犯罪の発生と合理的解決への経過を描く事」と記されています。

*「怪奇小説」と「推理小説」の違いは、小説内で起きた事件を、
 「合理的解決への経過を描く事」
という部分だけです。
* 推理小説家は読者に「合理的解決への経過を描く事」を提示する為に、
  
探偵(主人公)が必要になります。

この作品では、まず事件を解決する【探偵】は存在しません。
そして物語が進むにつれ、怪奇小説的になっていきます。
殺人事件がおきた後、関係者達はどんどん疑心暗鬼になっていきます。
その為に、関係者の中には、悪夢に悩まされたり、
現実との境目があいまいになっていく人物もでてきます。
あと、小説の最後に記述されている犯人の動機と犯行手段ですが、
動機はともかく、犯人の行動の一部は、非現実的な動きとしか思えません。
この部分については、アガサ・クリスティーは犯行手段の記述の部分を、
わざとぼやかして、執筆したと考えてしまいます。

以上の事を考えると「そして誰もいなくなった」という作品は、
推理小説を装った怪奇小説」だと自分は考えてしまうのです。