はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

クリスティーの「予告殺人」(再編集版)

*今回の記事は、以前に書いた記事をベースに再編集した物になります。


BBCの「ミス・マープル」から画像を引用。

アガサ・クリスティーが創作した探偵:ミス・マープル
本来、彼女は【読み切り型】の連載小説の為に創作された存在でした。
しかし、読者からの評判が良かった為、クリスティーミス・マープルを主人公にした中編小説を何作も執筆しています。
ですが、ミス・マープルが登場する中編小説は推理小説でありながら、
群像劇的な要素が多いと自分は思います。
というのも、ミス・マープルは洞察力は鋭いけど、ただのお婆さんです。
その為、事件関係者はミス・マープルの事を『ただの話好きなお婆さん』と認識して色々な【お喋り】をミス・マープルとします。
なので今回は、ミス・マープルの【お喋り】が最も効果的に使用された小説「予告殺人」について書いてみます。
*群像劇とは、特定の主人公を設けずに構成された作品の事。

まず、この小説の内容を簡単に説明すると、
地元紙の広告に【殺人お知らせ申し上げます】という文章が掲載され、
その文章に記載された日時と場所で殺人事件が起きます。
そして、この事件に関わる事になったミス・マープルが事件の真相を解明するという流れです。

さて、自分がこの小説で一番印象に残った場面は、
ミス・マープルが事件の真相を事件関係者に説明する場面です。
というのも、この場面でミス・マープルは、
『あの人が犯人なのではないか?』と、疑い始める【きっかけ】となった〈ある人物との【お喋り】〉について説明をします。
なので、「予告殺人」を初めて読んだ時には、
『え!あの【お喋り】の場面には、そんな意味もあったのか!』と、
本当に驚きました。
また、この場面でミス・マープルは非常に印象的なセリフを言います。

『人生に恨みを持つようになると、その怨みの心が少しばかりの道徳力を徐々に壊してしまうのです』
『つまり、弱い人間っていうものは本当に自身の安全が脅されると、
恐怖のあまり狂暴になり、自分をおさえきれなくなくなってしまうものですからね』

このセリフは犯人について、ミス・マープルが説明した時のセリフです。
ですが、このセリフにはアガサ・クリスティー自身の【人生観】も反映されてるのではないか?と、自分は感じるのです。
というのも、ミス・マープルが初登場した「ミス・マープルと13の謎」を書いた時、クリスティーは『ミス・マープルは自分の祖母をイメージして執筆した』と明言をしています。
しかし、作家活動後期に書かれた寄稿文では『ミス・マープルは自身の分身みたいな存在』と、クリスティーは書いています。
そして、この小説はクリスティーが60歳の時に発表されているのです。
なので、ここからはあくまで自分の妄想なのですが、
この【予告殺人】からアガサ・クリスティーの中では、
『自分の祖母をイメージして創作したミス・マープル』から、
『自分をイメージして創作したミス・マープル』に変化したのではないか?

そして、その様な変化があったからこそ、
ミス・マープルの【お喋り】を最も堪能できる「予告殺人」が誕生したのではないか?と、自分は妄想をしてしまいます。

haguture.hatenadiary.jp

ミス・マープルの初登場ついて書いた記事を貼っておきます。

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