はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

横溝正史の「犬神家の一族」➁

*角川シネマコンサートのポスター画像より引用。

横溝正史が書いた「犬神家の一族」に登場する【犬神佐清(スケキヨ)】
この人物は頭から白いゴムマスクをすっぽりと被り、目だけが出ているという特徴的な外見をしています。
また、小説の終盤では湖面から足を突き出した姿で【スケキヨ】は殺害されてしまいます。
ですが、その外見と死に方と設定により『金田一耕助シリーズ』に登場する人物の中で読者に一番強烈な印象を与えたキャラだと思います。
その為、「犬神家の一族」が映像化した時には、
宣伝のキービジュアルとして使用されて「犬神家の一族」を知らなくても【スケキヨ】の事は知っているという人が増えました。
なので今回は、その【スケキヨ】について書いてみたいと思います。

角川映画犬神家の一族」より引用。

犬神家の一族」に登場する【スケキヨ】は戦争で顔に大怪我をした為、
顔の傷を隠す為にゴムマスクを被っているという設定です。
その為、「犬神家の一族」を読んだ人は【スケキヨ】が登場した時、
『これ、中身が入れ替わっているな・・・』
と、誰もが想像したと思います。

ここからは、少し推理小説における「顔の無い死体」というトリックについて簡単に説明します。
まず、このトリックは身元不明の死体を利用するトリックです。
例えば、首無し死体が発見され、所持品から死体は人物Aと断定されます。
ですが、実は殺害されたのはAと外見が似ていた人物Bであり、
AはBに成りすましていたという設定が「顔の無い死体」というトリックのオーソドックスな使われ方です。

また、【スケキヨ】みたいに【人物の顔が判別できない設定】も、
このトリックに含まれます。
その為、このトリックを使用した推理小説は数多く存在しますが、
それに伴い、昔から推理小説を読んでいる読者は、

小説内で身元不明の死体が出たり、素顔を隠す人物が登場すると『あ、これは・・・』と、察する様になりました。

その為、「犬神家の一族」では『この人物は、本当にスケキヨか?』と追及される点が話の主軸のひとつとなっています。

角川映画犬神家の一族」より引用。

推理小説には「見立て殺人」という童謡や物語の故事に見立てた形で犯人が殺人を行う設定があります。
そして、この設定が「犬神家の一族」では使用されている為、
湖面から足が突き出でた姿で【スケキヨ】の最後は描かれます。
つまり、【スケキヨ】という人物は【顔の無い死体】と【見立て殺人】を兼ね備えた存在なのです。

角川映画「獄門島」より引用。

改めて言及しますが、『金田一耕助シリーズ』の全作品に「顔の無い死体」は使われてはいませんし、「見立て殺人」に関しても同じ事が言えます。
ですが、このシリーズを代表する作品では【顔の無い死体】が上手に話に組み込まれていたり、【見立て殺人】の演出が効果的に使用されています。
その為、「顔の無い死体」と「見立て殺人」を兼ね備えた【スケキヨ】は『金田一耕助シリーズ』に登場する人物の中で読者に一番強烈な印象を与えた存在になったのだと思います。

さて、このブログの初期に「犬神家の一族」に関して妄想していた事を、
記事にしたのですが読み直すと色々と修正したくなりました。
なので次回は、以前に書いた記事の修正版を挙げたいと思います。


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