はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

山田風太郎の「魔界転生」再読

自分は山田風太郎の小説は数本しか読んでいませんが、

魔界転生」は山田氏が書いた最高傑作だと自分は思います。

この小説は冒頭部分はオカルト的な世界観から始まります。

そこから、エロティシズム・悲哀・悔恨・グロテスク・暴力・計略などの

娯楽要素がこれでもか!というぐらいに盛り込まれた内容です。
去年の年末は特に予定もなかったので、

数年ぶりに山田風太郎の「魔界転生」を再読しましたが、

やっぱり面白い!それしか感想はでません!

しかし、この小説に関する事で、個人的に気になる点が2つあります。

今回はその事について書いてみます。

その➀ 販売されている文庫本の装画デザインについて。

2023年時点ですが「山田風太郎魔界転生・本」で検索すると、

角川文庫版と講談社文庫版の「魔界転生」が出てきます。

魔界転生 上 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫) 角川文庫の装画

魔界転生 上 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫) 講談社文庫の装画。

魔界転生】は 7人の魔人と柳生十兵衛との対決を中心にした、

血と暴力のエンタメ小説です。

しかし、現時点で販売されている文庫本の装画だと、

この小説の世界観がまったく出てないと思います。
装画の違いで小説の内容が変わるわけではありませんが、

自分が好きな小説なので、この点がどうしても気になってしまいます。

*こちらの画像は自分の手元にある角川文庫版「魔界転生」の装画です。

装画担当は寺田克也氏。この装画の方が「魔界転生」の世界観を表現していると、

自分は思いますが、角川文庫は何故、装画を変更したのでしょう?



その➁ 映像化した「魔界転生」について。

魔界転生」は何回か映像化しています。

自分も2作品ほど観賞しましたが、やはり原作小説の方が面白いです。

原作の「魔界転生」は約1000ページの長編小説ですが、

この小説の約五分の一を使用して山田風太郎は、

【秀でた武芸により人々から称賛された人物達が何故、

邪法を使用して魔人に転生したのか?】

という物語をしっかりと書いています。

しかし映像化すると、この物語が簡略化されてしまいます。

その点がもったいないし、原作小説の魅力を描き切れない点だと思います。

 

魔界転生」は娯楽小説として一級品だと自分は思います。

自分がこの小説を初めて読んだ時は面白すぎて、

読み終わったら朝だったのも、今となってはいい思い出です

だからこそ、今の文庫本の装画デザインや映像化した作品に対して、

自分は不満をもってしまいます。