はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

【原作の映像化】について:後編

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*今回の記事は前回からの続きになります。

日本テレビで起きた【セクシー田中さん:脚本トラブル事件】
この事件は、脚本家・テレビ局・出版社の価値観が約80年前から変わっていない為に起きたと自分は思います。
というのも、この事件を知った時、自分は横溝正史のエッセイで書かれた【あるエピソード】を思い出したからです。
なので、今回はその事について書いてみます。

*上記の本を参考にして、今回の記事は作成しています。


『カッドー屋を相手にする場合、絶対にこちらの希望や主張は通らないと思え。かれらは勝手に原作をゆがめてしまうものだから、立腹しないように』
江戸川乱歩横溝正史に宛てた手紙の一部を抜粋。 

これは今から約80年前の話になります。
ある日、岡山に疎開中の横溝正史江戸川乱歩から手紙が届きました。
その手紙には『ある映画会社が、君の「本陣殺人事件」を映画化したいという事だが、どうだろうか?』と、書かれていました。
というのも、横溝正史江戸川乱歩が知り合いという事を、
その映画会社は知っていた為、映画化の話を江戸川乱歩に頼んだのですが、この話は映画会社と折り合いがつかず白紙になります。
ですが、今度は別の映画会社から映画化の申し込みがありました。
だけど、横溝正史疎開中の為、岡山からすぐには移動できません。
その為、横溝正史は「本陣殺人事件」の映画化に関しては、
自身の小説が映画化された事がある江戸川乱歩に一任しました。


*1947年に公開された「3本指の男」は片岡千恵蔵が主演、共演者は原節子でした。

その後、「本陣殺人事件」は「3本指の男」という題名に変更されて公開されましたが、映画の金田一耕助はソフト帽にスーツという服装でした。
また、犯行の動機が変更された事で小説に登場した「密室トリック」と犯人も変更されました。
なので、今の時代だったら『酷い原作改変』と言われたかもしれません。
ですが、当時はこれが普通でした。
何故なら、この時代は連合国軍による【検閲】があったからです。


1945年、日本は敗戦国となりました。
その為、日本は連合国軍の占領下におかれて【検閲】が行われました。
その結果、当時の娯楽映画のメインだった「時代劇」は、
野蛮な映画と連合国軍に認定された為、表現に色々と制約が入ります。
なので、映画会社は「探偵小説」の映画化を始めましたが、
その映画も勿論【検閲】されます。
なので、当時の映画会社関係者は【検閲】をクリアする為、
連合国軍の係員にも話がわかる様に原作を改変して映画を製作しました。
その結果、「本陣殺人事件」は「3本指の男」という題名になり、
金田一耕助はソフト帽にスーツを着た伊達男になりました。
また、犯行の動機も連合国軍の係員がわかり易い内容に変更されました。
そして、これは出版社でも同じ事が起きたと思います。
*連合国軍による【検閲】は1952年まで行われました。

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自分は、人々の考え方や価値観は時代によって変化すると思っていました。
ですが、そうではなかったみたいです
何故なら、1940年代の脚本家・映画会社・出版社が行った【原作改変】は連合国軍の【検閲】をクリアする為、というのが理由のひとつでした。
ですが、2020年代の脚本家・テレビ局・出版社はただ、
『昔の同業者も原作者の許可なく【原作改変】をしていたから、自分達も大丈夫でしょ?』という感覚で【原作】を取り扱っているとしか思えません。
つまり、言い換えるなら脚本家・テレビ局・出版社は約80年前から仕事の方法が変わっていないのです。
だから、自分は思うんです。
そんな業種の人達の価値観は約80年前から変わっていないと。


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