はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

横溝正史の「悪魔の手毬唄」再読

 

横溝正史の作品で1番好きな作品です。
金田一耕助シリーズの集大成とも思います。
そして、読み終わった後に、気持ちが沈む作品です。

初めて読んだ時は、気付かなかった点も再読した事により、
気付いた事がありました。
ちょっと、ネタバレになってしまいますが、
この「悪魔の手毬唄」では犯人死亡の後、
金田一耕助が事件関係者を集めて、真相を明らかにしていきます。
その中で、金田一耕助に対して関係者が色々と質問をするのですが、

その質問の中である2つの質問が自分の心にひっかかりました。

➀何故、犯人は変装した姿で金田一耕助の前に現れたのか?
補足:小説序盤で、犯人は変装した姿で金田一耕助に挨拶をして、
すれ違う場面があります。

➁何故、犯人は見立て殺人を行ったのか?
補足:小説の舞台となった村にある手毬唄の歌詞に見立て、
犯人は殺害現場に小道具を残していきます。

➀に関しては、「犯人は金田一さんを挑発したかったんじゃないのか?」
と、関係者が発言して話は進みますが、自分は違う解釈をしました。

犯人は変装した姿で金田一耕助にわざわざ挨拶して行きました。
そして、バレないかどうかを確認したかった。
なぜなら、犯人は変装した姿で被害者に会って殺害をしていくから。

➁に関しては、「犯人が別の人に疑いをかける為の行為じゃないか?」
と、関係者が発言しますが、これに対しても自分の解釈は違いました。

何故、そこまでして、手毬唄の見立てをしたかったのか?
それは犯人が手毬唄の歌詞を知った時に、殺害を構想したからではないか?
だから、手毬唄の歌詞に固執して、そして自己満足の為に、
見立て殺人を行ったのではないか?

初めて読んだ時は、犯人の動機は長年にわたり積み重なった憎しみが、
あるきっかけで爆発して、事件がおきたという認識でした。
でも再読して➀と➁の質問対して、自分なりの解釈をした時、
犯人に対する印象が、ガラッと変わりました。

犯人は殺害計画を前から構想しており、事件の前から小道具を手元に集め、
殺害する対象を、長年観察していたのです。
そして、犯人は犯行を行う前に、金田一耕助の前に変装した姿で現れ、
変装の出来ばえを確認する下準備もしてました。
犯人が手毬唄の事をいつ知ったのか?その記述はありませんが、
犯人が手毬唄の歌詞を読んで、殺害計画を閃いて、
殺害計画の構想を練り上げる。そんな人物像が浮かび上がりました

そして、もうひとつ。妄想を付け加えます。
犯人は変装する事により、「一人二役」を演じています。
悪魔の手毬唄」の中では、
犯人以外にもうひとり「一人二役」の人物がいます。

この人物は「一人二役」を演じる事で、優越感を得ていきます。
なら、犯人も同じ心境だったのでしょうか・・・

以上の様に妄想すると「悪魔の手毬唄」の犯人は、
金田一耕助シリーズで出てきた犯人の中で最も恐ろしい犯人です!
まさしく悪魔の様な・・・