はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

横溝正史の「獄門島」再読

 

推理小説の設定で「嵐の山荘」という物があります。
「嵐の山荘」を簡単に説明すると、山荘に集まった数人が、突然の嵐の為、
外部から遮断され、閉じ込めらてしまいます。
その外部との連絡もとれない、閉じられた空間で事件が起きる設定です。

「嵐の山荘」の設定で書かれたミステリーで、
有名な物はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった」の内容を要約すると、
謎の人物から招待を受けて孤島にきた10人の男女が、
外部からの交通も遮断され孤島に閉じ込められた状態で、
童謡の歌詞になぞらえて殺されていくという内容。
横溝正史の自著にも書かれてますが、
彼はアガサ・クリスティーの小説から、色々と影響を受けています。
クリスティーの「そして誰もいなくなった」を読んだ横溝正史が、

自分なりの構想を練って書かれたのが「獄門島」でした。


この作品は終戦後、戦地から帰還した金田一耕助が、戦友の頼みにより、
瀬戸内海に浮かぶ島、「獄門島」に向かう場面から始まります。
初めてこの作品を読んだ時は、推理小説として楽しみました。
で、今回改めて読み直すと全然違う印象を受けました。それは、

「獄門島」は、横溝正史が書いた芝居です!

正確には芝居的演出が散りばめられた作品です!
この小説の結末を知っている状態で改めて読み直すと、
小説序盤のある場面で目が止まりました。
それは、金田一耕助が島に向かう船に乗船してますが、それと同時に
事件に使用される、大道具の搬入手続きがされてます。
その記述に気づいた時、小説の印象ガラッと変わりました!
さらに再読中、色々なキーワードに目が行く様になります。
愛染かつら・恋文・娘道成寺・旅役者など芝居に関係する言葉、
さらに芝居が好きな島民達に、芝居がかった殺害現場。

つまり、金田一耕助は「獄門島」という芝居に呼ばれた、
ゲスト俳優であり、主役!
そして芝居の脚本は既に出来ています。あとは主役のみでした。
そこに主役となる金田一耕助が登場して、
同時に芝居に使用する大道具の手配も完了!
そして、自覚のないまま金田一耕助が舞台に上がり、芝居が始まりました!

あと、「獄門島」は金田一耕助シリーズにおいて、重要な作品です。
この「獄門島」は金田一耕助が戦地から帰還して、初めての事件です。
そして、金田一耕助シリーズの世界観が、これで決まった作品だからです。
次回は「本陣殺人事件」と「獄門島」を比較して妄想してみます。