はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

クリスティーの「オリエント急行殺人事件」再読

 

アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」。
この作品もある意味、有名な作品です。
その為、結末を知っている状態で読みました。
今回改めて再読して、気づいた点をあげてみます。
初めて読んだ時は気付かなかったのですが、
この作品の舞台設定が「嵐の山荘」という事に気づきました。

「嵐の山荘」については、前に上げた「獄門島」の時に書きましたが、
簡単に説明すると、山荘に集まった数人が、突然の嵐の為、
外部から遮断され、閉じ込めらてしまいます。
その外部との連絡もとれない、閉じられた空間で事件が起きる設定です。
haguture.hatenadiary.jpこの作品は「嵐の山荘」だと認識しながら読んでいたら、
主人公のポワロのあるセリフが印象に残りました。
その印象的だったセリフを紹介します。

【この事件で僕が非常に面白く感じていることは、
 当然、警察が行使できるはずの事が全然行使できない事だ。
 我々は事件に関係ある人々の身元を調査する何の手段も講じられない。
 単に本人の供述に従って、推定するだけだ】

殺人事件の現場に偶然居合わせたポワロは、捜査をしていきますが、
事件現場に閉じ込められた状況の為、彼は警察との連絡も取れません。
なので、事件に関わる関係者の証言と現場証拠を集めても、
関係者の身元確認も、証言の裏付けも、確定はできない状況です。
だからこそ、事件を解決するには、探偵の思考で補うしかないのです。

この作品が発表される以前から「嵐の山荘」の設定は、
色々な作品で使用されています。しかしそれは、
外部との連絡もとれない、閉じられた空間で事件が起きる設定だけでした。
だから、クリスティーは、もう1歩踏み込んで、考えてみたのではないか?
もし「嵐の山荘」という状況に探偵が閉じ込められたなら、
どの様な推理を展開するのか?
アガサ・クリスティーが書きたかったのは、
今までにない「嵐の山荘」を使用した、推理小説だったのではないか?
そこを突き詰めて書いた結果が、あの結末だったのではないか?
作品を再読して、そう認識する様になりました。