はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

横溝正史の「黒猫亭事件」再読

推理小説のトリックのひとつに【顔の無い死体】という設定があります。
この設定は、身元不明の死体(顔が損傷・首が無い・火災で黒焦げなど)が発見されて調査の結果、ある人物と特定をされます。
ですが、本当はその人物は生きていて、別人の死体を利用して偽装していたという設定です。
また、この設定は昔から多くの推理小説で使用された為、
何時の頃からか、推理小説の読者達は小説で身元不明の死体が出てくると、
【ふ~ん、被害者と加害者が入れ替わっているな・・・】
と、思うようになりました。

さて、この「黒猫亭事件」の冒頭では、小説内に横溝正史自身が登場して、
自身が創作した探偵:金田一耕助に以下の様な事を話しています。
推理小説の王道的トリックの「一人二役」と「密室」と「顔の無い死体」
というのがあるんだが、それぞれに構想が違うんだ。
一人二役」は小説の結末まで「一人二役」が読者にバレないように、
書かなければいけない。
「密室」には色々な種類があるから、今回の作品に使用する種類を決めて、
密室の条件を作っていけばいい。
だが「顔の無い死体」については、どうもいけないんだ。
「顔の無い死体」がでてくると、読者はみんなこう思うんだ。
どうせ、犯人と被害者が入れ替わっているんだろ?
だから逆に「顔の無い死体」を使用して、面白くできないか?】

この会話の後に「黒猫亭事件」の本編が始まるのですが、
「黒猫亭事件」は角川文庫版だと「本陣殺人事件」に他2編という形で編集されている為、『金田一耕助シリーズ』の中では知名度はあまりない小説だと思います。
ですが、【顔の無い死体】というトリックだけで、話が二転三転する構成が面白い為、自分は【本陣殺人事件】よりも【黒猫亭事件】の方が好きです。

さて、「黒猫亭事件」とは直接的な関係ありませんが、
金田一耕助シリーズ』の第1作「本陣殺人事件」は、
金田一耕助が戦地に行く前に起きた設定であり、
後の『金田一耕助シリーズ』は金田一耕助が帰還した後の設定です。
この点についても妄想をしたいので、
次回は金田一耕助が帰還してから起きた「獄門島」について書いてみます。

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