はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

江戸川乱歩の「人でなしの恋」再読

 

江戸川乱歩の「人でなしの恋」という短編小説。
前のブログで「お気に入りの江戸川乱歩の作品」で、
この「人でなしの恋」もお気に入りの作品のひとつと書いたんですけど、
再読したら「あれ?そんなに面白くない・・・」と思いました。

 

haguture.hatenadiary.jp

初めて読んだ時の「人でなしの恋」という印象的な題名と、
異常な世界観で自分の記憶に残っていた作品だったのですが・・・。

なので、「こんなに記憶に残った作品なのに、何故、面白くないのか?」
と考えながら、また読み直すと、ある事に気づきました。

この「人でなしの恋」は怪奇小説ではなく、幻想文学だったんです!

幻想文学とは、神秘的・空想の世界を書いた文学の事です。
日本の幻想文学といえば、
竹取物語」や「雨月物語」などが代表的な作品です。
もちろん、江戸川乱歩はそんなつもりで、書いていませんが、
結果的に幻想文学になってしまったのです!

なんでそう感じたのか?それは、
作品の中で:泉鏡花の小説に出てくる人物みたい:という文があります。
泉鏡花とは江戸川乱歩と同時代の幻想文学作家であり、演劇脚本家です。
もしかして、この小説は江戸川乱歩が、泉鏡花を意識して、
書いた作品だったんじゃないのか?と考える様になりました。

推理小説が舞台化する事は1900年代からありました。
また、推理小説家が演劇用の脚本を書いた事もあります。
代表的なのが、
推理小説家のアガサ・クリスティーが書いた「招かれざる客」です。
また、アガサ・クリスティーの作品には、
演劇用の脚本を小説に書き直した作品もあります。


そうすると、こう妄想できるのです。
この「人でなしの恋」は、
江戸川乱歩が書いた演劇用の脚本だったんじゃないのか?
その脚本が使用できなくなり、小説に書き直したのじゃないのか?

そう考えてみると、最初の疑問、
「こんなに記憶に残った作品なのに、何故、面白くないのか?」
の答えがでました。
江戸川乱歩の作品で自分が好きなのは「怪奇小説」です。
「人でなしの恋」を初めて読んだ時、この小説は「怪奇小説」だと、
思い込んでいました。でも、読み直すと全然違う物だと気づきました。

人間の記憶ほど、当てにならないものは無いですね・・・