はぐれの徒然なるままに(仮)

肩こりと老眼が進行中の中年男性による回顧録

「ある部分だけ」が有名な小説の話④

推理小説家:横溝正史が書いた長編小説「八つ墓村」。

この小説は何度も映像化されています。

自分は映像化された「八つ墓村」を見た後に、原作を読んだのですが、

映像化された「八つ墓村」のイメージが強くて、

原作を素直に楽しめませんでした。何故、楽しめなかったのか?

それは、

映像化された「八つ墓村」はミステリー的要素が強い作品ですが、

原作の「八つ墓村」は冒険小説的な要素が強い作品だからです。

今回は、その事について書いてみます。

まず、映像化された「八つ墓村」と原作小説の「八つ墓村」では、

それぞれ主人公が異なります。

映像化された【八つ墓村】の主人公は探偵:金田一耕助ですが、

原作小説では、寺田辰弥(テラダタツヤ)という青年が主人公です。

原作の「八つ墓村」では、村に訪れた寺田青年の視点で話が進むのですが、

落人伝説から始まり、20数年前の虐殺事件、寺田青年の出生の秘密、

謎の連続殺人、財宝伝説、そしてロマンスと色々と詰め込まれた内容です。


そして、ここからは自分の想像ですが、

金田一耕助シリーズ」として映像化するのに、原作通りに作ると、

金田一耕助が、あまり登場しない作品になってしまいます。
そこで、映像制作をした制作陣は、金田一耕助を主役にして、

金田一耕助視点の作品に作り変えたと思います。

映像化された「八つ墓村」では村で起きた連続殺人を捜査する、

金田一耕助の視点で話が進みます。

原作小説で書かれた連続殺人は、推理小説で昔から使用されている、

「見立て殺人」と「不連続殺人」という2つのトリックを、

横溝正史が上手に組み合わせているので、金田一耕助を主役にしても、

作品として充分成立すると、制作陣は判断して映像化したのでしょう。


自分は「八つ墓村」に関しては、古谷一行さんが金田一耕助を演じた、

ドラマの印象が強いため、原作の「八つ墓村」を読むと違和感を感じます。

何故なら、映像化した「八つ墓村」の方が好きだから、仕方ありません。