この小説は何度も映像化されています。
自分は映像化された「八つ墓村」を見た後に、原作を読んだのですが、
映像化された「八つ墓村」のイメージが強くて、
原作を素直に楽しめませんでした。何故、楽しめなかったのか?
それは、
映像化された「八つ墓村」はミステリー的要素が強い作品ですが、
原作の「八つ墓村」は冒険小説的な要素が強い作品だからです。
今回は、その事について書いてみます。
まず、映像化された「八つ墓村」と原作小説の「八つ墓村」では、
それぞれ主人公が異なります。
原作小説では、寺田辰弥(テラダタツヤ)という青年が主人公です。
原作の「八つ墓村」では、村に訪れた寺田青年の視点で話が進むのですが、
落人伝説から始まり、20数年前の虐殺事件、寺田青年の出生の秘密、
謎の連続殺人、財宝伝説、そしてロマンスと色々と詰め込まれた内容です。
そして、ここからは自分の想像ですが、
「金田一耕助シリーズ」として映像化するのに、原作通りに作ると、
金田一耕助が、あまり登場しない作品になってしまいます。
そこで、映像制作をした制作陣は、金田一耕助を主役にして、
金田一耕助視点の作品に作り変えたと思います。
映像化された「八つ墓村」では村で起きた連続殺人を捜査する、
金田一耕助の視点で話が進みます。
原作小説で書かれた連続殺人は、推理小説で昔から使用されている、
「見立て殺人」と「不連続殺人」という2つのトリックを、
横溝正史が上手に組み合わせているので、金田一耕助を主役にしても、
作品として充分成立すると、制作陣は判断して映像化したのでしょう。
自分は「八つ墓村」に関しては、古谷一行さんが金田一耕助を演じた、
ドラマの印象が強いため、原作の「八つ墓村」を読むと違和感を感じます。
何故なら、映像化した「八つ墓村」の方が好きだから、仕方ありません。